1990年4月 任天堂
任天堂の看板タイトルの一つであるファンタジーシミュレーションRPGの元祖。
死んでも生き返ることができる、というのはゲームの世界では当たり前ですが、このシリーズの作品ではそれが許されないのが大きな特徴です。
結果、いかに死なないようにキャラを動かすか試行錯誤しないとならないですし、いくら慎重にやっても「運」の要素であっさり死んでしまう可能性も秘めておりプレイ中は気が抜けません。
もし死んでしまった場合、セーブできるタイミングがステージクリア後だけなので、物語序盤の方ならまだしも中盤に差しかかるぐらいには1ステージクリアする為の時間と労力はそこそこのものなので、またステージの最初からやり直しするというのはめちゃくちゃイタイです。
キャラが死んでもゲームの進行は可能ですが、やはりクリア時に全員生還させたいってのが人情というものです。
スポンサーリンク
ゲームの背景
「数名の仲間と共に落ち延びた亡国の王子が徐々に仲間を増やし、帝国を倒して故郷の再興を成す」というあらすじで、中世ヨーロッパ風世界観の戦記物です。
基本的には剣や槍、弓などによる敵対する国の人対人の戦いがメインですが、少々の魔法と、普段は普通の人間の姿ですがバトルになると竜に変身できる「マムクート」と呼ばれる種族が数人登場するというちょっとしたファンタジーな部分もあります。
最初はたった7人しかいない仲間ですが、マップにある「村」を訪ねることで仲間が増えたり、あるいは敵である帝国にはしょうがなく帝国側に所属しているキャラもいて、特定の仲間キャラで話しかけると敵だったキャラを仲間にできるというのもこのゲームのもう一つ大事な要素です。
戦闘中に戦力を割いてわざわざ村を訪れたり、敵側にいたキャラが説得に応じて味方になってくれたり、そうやってせっかく仲間にしたキャラが死ぬと生き返らないシステム、そこへ国と国の思惑が絡んだストーリーが組み合わさり、それぞれのキャラに感情移入できること間違いなしです。
ナムコの名作シミュレーションである「キングオブキングス」との大きな違いがこの感情移入の度合の差だと思います。
キングオブキングスにもユニット育成要素はありますが、こちらはどのユニットを、どれだけ雇って、いかに効率的に敵勢を追い詰めていくかに特化したシミュレーションゲームであり、ユニットはやられるのが前提の存在です。
冒頭ストーリーのあらまし
主人公のマルス王子の最終目標はドルーア帝国のドンである暗黒竜メディウスの撃破です。
メディウスは前述のマムクートであり、その中でも王族である「神竜族」に次ぐ力を持つ「地竜族」において最強の存在だそうです。
ちなみに竜族は格上から順に、神竜族・地竜族・魔竜族・火竜族 となっています。
マルスの国アリティアはアカネイア大陸の内陸部西部にあった王国で、100年の眠りから復活した暗黒竜メディウスの侵略に加え、同盟国だったグラ王国の裏切りにより滅亡。マルスは姉のエリス王女の助けで数名の仲間と共の辺境の島国・タリス王国へと逃げ延びます。
メディウス率いるドルーア帝国は、100年前にもその強大な力でアカネイア大陸を支配しつつありましたが、アリティアの青年アンリと神剣ファルシオンにより倒されたという歴史があるのです。
第1章(「マルスの旅立ち」)では、タリス王国に逃げ延びてから2年後、マルス16歳のある日、タリス城がドルーア帝国に加担している海賊団に占拠されてしまうところから始まります。冒頭でタリスの王女シーダが助けを求めてマルスの元へやってきます。
このゲームのヒロインのシーダです。[ペガサスナイト]です。…ここにもちょっとファンタジーがありましたね。
ヒロインだけあって、シーダが話しかけることで仲間になるキャラはマルスの次に多いです。
ヒロインのシーダ
シーダは、マルスがタリス王国に来てからの2年間と、このゲームの舞台である暗黒戦争の間でお互いに惹かれ合い、期待を裏切ることなく最終的には結ばれることになるわけですが、そんなシーダの敵キャラを説得する時の内容がたまにマルスを閉口させそうなものがあるのはご愛敬でしょうか。
口、開いてますが。
シーダの説得で仲間になる人たち
第2章:カシム(ハンター)
タリス出身のカシムは、病気の母親の薬代の為に仕方なく海賊に雇われており、それを見つけたシーダは自分の手持ちを渡し、これを持って母親の元へ帰るように言うと、カシムは「国を裏切った私にこんなに優しくしてくださるなんて…この命あなたに捧げます!」と言って仲間になります。
これはありがちな感じでノーマルな内容です。
ところで、この後カシムはずっと従軍しますが、帰らなくていいんでしょうか?
第3章:ナバール(傭兵)
タリスから最初の目的地オレルアン王国へ行く為にはデビルマウンテンを通らなければならず、ここは盗賊団の巣窟となっており、この界隈で有名な剣士であるナバールが盗賊団の用心棒として雇われています。
シーダが「あなたほどの剣士がなぜ…」と言って話しかけると、硬派なナバールは「女子供に用は無い、去れ!」と一蹴しますが、シーダは、私たちに力を貸してくれないならその剣で私を好きにして…、としょっぱなから意味不明の命がけです。
しかし、その信念に感服したナバールは「女を切りつける剣は持っていない」と言って仲間になります。
仲間になってくれたからいいものの、仲間になってくれないなら私死ぬから!みたいな説得はシーダにしかできません。
第8章:ロジャー(アーマーナイト)
ドルーア帝国の最大の同盟国グルニアのただの一兵士です。そんなロジャーをなぜか突然仲間にしようとするシーダ。ここでの勧誘文句はその突飛な内容のせいか、このゲームの名場面の一つとなっています。
シーダの「あなたは愛を信じますか?」に始まり、最終的にはロジャーは「友達が欲しいから、やっぱり君と一緒に行くよ。」で勧誘成功です。
ロジャーも最初に「あんた大丈夫かい?」と言ってしまうほど唐突な勧誘だったため、この会話内容をマルスが聞いていたら間違いなく閉口していることでしょう。
最初はこちらからすり寄り、気が付けば最後は向こうに追いかけさせる。こんな技は美しきシーダ姫にしかできません。
男なら「誘われている!」とカン違いするはず。
第11章:ジェイク(シューター)
グルニア軍のジェイクは、戦うことを好まないのんびりとした一兵士です。ジェイクにはアンナという恋人がいますが、その恋人も認める女たらしだそうで、女性が話しかけたら素直に会話に応じてくれると教えてくれます。
シーダの出番です。
シーダがアンナの思いを伝えるとあっさりと寝返ります。しかも「アンナの為」ではなく「アンナとシーダの為」にグルニア帝国から離脱します。
強大なグルニア軍と言えどもミクロの視点で見ていくと、所詮は普通の人間で構成されているわけで、美女の誘惑には敵わないのであります。
シーダはただ純粋なだけなんです。島国の王国の王女様ですもの。
第20章:ロレンス(将軍)
シーダの最後の大仕事です。相手はグルニア帝国の将軍です。
但し、この将軍ロレンスはシーダとはちょっとした顔見知りであり、ロレンスはグルニア内でもドルーア帝国との同盟反対派でしたが、将軍という地位もあり、気弱なグルニア王の決定に従わざるを得ず出陣しているので、シーダの協力要請の一押しでふっきれたように仲間になってくれます。
ところで、仲間になるキャラは顔グラフィックが大体味方っぽい顔をしているので、プレイして間もない頃は敵軍を確認して、仲間にできそうなヤツを探す、そしてマルスかシーダで近寄ってみる、みたいなことをやったりしてましたが、仲間になりそうでならない最たるキャラが、この章で登場する最強の敵キャラと言っても過言ではないグルニア帝国のカミュです。
顔グラフィックは主人公レベルの男前、そしてアカネイア大陸の最大最古の王国・アカネイアの王女ニーナの命の恩人という位置付け、しかも伝説の武器であるグラディウスを持って城に立てこもるパラディン、こんなヤツ倒せるわけがない…そうか、仲間にできるから倒せないんだな… … …
残念ですが仲間になりません!
ちなみに仲間になるロレンスは敵顔です。
クセの強い成長過程
敵を倒すと50前後の経験値が貰えて、一律で経験値が100になるとレベルアップしますが、ダメージを与えただけでも与えた分だけ10とか20とかの経験値がもらえます。
そして、このゲームの与えるダメージ計算方法はとても単純で、「力の値+武器の攻撃力-守備力」となっており、やはり実質的に強くなる要素の「ちから」か「しゅびりょく」の値が上がって欲しいわけです。
ですが、なかなか上がってくれません。上がるときは結構「ちから」と「しゅびりょく」はセットで上がったりしますが、「ぶきレベル」「すばやさ」「うん」「さいだいHP」ばかり上がって、全然ダメージを与えられないユニットができることがよくあります。
しかも、上がり方の傾向が同じようにずっと続くこともあり、最初に「ちから」「しゅびりょく」が上がらないパターンになるとずっと上がらず、挙句の果ては最大レベル20になったのに「ちから」が最高で20の内10しかないキャラに育ったりします。
逆にひたすら「ちから」「しゅびりょく」「さいだいHP」のセットが上がって、攻撃力はあるけども「すばやさ」が低いのでいつも敵に2回攻撃されるというパターンもあります。戦士や海賊はこのパターンになりがちです。
また、全般的に「しゅびりょく」は上がりにくい気がします。
前述の最強の敵カミュを倒すにはそこそこバランスの取れた強めのユニットを数人育てておかないとクリアできないか、もしくは死者を数人出してしまう可能性がありますよ。
セーブできるタイミングはステージクリア後なので、次のステージの1ターン目でレベルアップが可能な状態であれば希望する数値がアップするまでやり直すぐらいは許される範囲かと思います。
スポンサーリンク
城内戦での心理
このゲームにおけるマルス軍は基本的に攻め込む側なので、あまり悠長に敵の進軍を待つ作戦に出られるとゲーム製作者としても本意ではないでしょう。
特に敵が立てこもる城内戦では、籠城する側が積極的に攻めてきて、マルス軍が敵の進軍を待つのはちょっと不自然です。
そこで取ったシステムが宝箱の配置です。
このゲームに登場する宝箱にハズレはほとんどなく、是非とも全部ゲットすべきものばかりが入っていますが、この宝箱を専門に狙う敵ユニットが「盗賊」です。
盗賊は宝箱まで絶妙な距離で初期配置されている為、速やかに進軍しないと盗賊に先に宝箱を取られてしまい、倒しても奪い返すことができなくなります。
最初に宝箱を見せつけておいて早くしないと敵に奪われますよ、という小憎い演出は秀逸です。
また敵の盗賊は野外戦においても、仲間やアイテムが手に入る重要施設である「村」に先に到達すると無慈悲な破壊行為を行い、訪れることをできなくされます。
ところで、初期状態では宝箱は味方の盗賊ユニットでしか開けることができませんが、第7章以降はマルスも宝箱を開けることができるようになります。
というのも、第6章クリア後にアカイネイア王国のニーナ姫がマルスに「ファイアーエムブレム」を授けてくれますが、本来は「アカネイア王家の代理として、世界を救う者に与える覇者の証」だそうですが、ゲーム中の効果としては「マルスが宝箱を開けることができるようになる」です。
なんかスゴそうなエムブレムなのに、盗賊アクションの一つが可能になるという効果がどうにもエンブレムのうさん臭さを漂わせますが、実際のところ、マルスで宝箱が開けられるようになるととても便利です。
注目キャラクター
ジェイガン
初期仲間でマルスの傳役(もりやく)であるジェイガンはすでに上級クラスであるパラディンで、持っている武器が最高級武器の「銀の槍」です。
もし遠慮なくこのジェイガンを使うと序盤ではほぼ無敵でしょうが、あまりの成長率の低さにレベルが上がってもステータスが何も上がらないことが多い人物設定となっています。
その為、知っている人は、まずこのじい様から銀の槍を取り上げる、さらに、戦わせて経験値を稼ぐのも無駄なので戦いには一切参加させず、後方でほったらかしにされるあまりにも可哀想な存在です。
アーマーナイトと将軍
どちらもあまりにもゴツイ鎧をまとった兵士で、物理攻撃に対してものともしない動く壁のようなユニットです。
敵から進軍された場合は動かず壁に徹していればかなり効果的な兵種ですが、戦闘画面を見る限り動作があまりにもトロいです。
進軍する側のアーマーナイトとなると話は別で、こんなすっトロい攻撃を食らうやつがいるわけがありません。
ちなみにこの2種は似てますが、将軍はアーマーナイトの上級クラスではないです。
僧侶
このゲームの僧侶は一切攻撃できないユニットです。
主に回復魔法による支援ユニットなので、味方を魔法で回復してあげると経験値が得られるのかと思いきや、もらえません。
僧侶が経験値を得るには、敵から攻撃を食らっても生き延びることです。それだけで40もの経験値がもらえます。
とはいえ、守備力もHPも低い僧侶が敵の攻撃を耐えきるのはゲーム序盤と言えどもなかなかの荒行です。
クラスチェンジして「司祭」になれば攻撃魔法も使えるので一応有用なユニットになりますが、僧侶をクラスチェンジ可能なレベル10まで上げるというのがそもそも至難の技です。
僧侶に愛着がある場合以外は、味方ユニットに守られながら回復に徹するキャラでいいんじゃないでしょうか。
それに僧侶は最初に仲間になるリフを除けば、残りはうら若き女性なわけですが、あの悪者チックなシルエットの司祭姿は似合いません。
バヌトゥとチキ
この2人はマムクートで、バヌトゥは下級種族の火竜族、チキは最上級の神竜族で、しかもその王・ナーガの娘です。
バヌトゥはチキの傳役で、旅の途中ではぐれてしまったところへ現れたマルス軍に、仲間になるからチキを探して欲しいと言って合流します。
火竜族といってもやはりマムクートなので並みの人間では太刀打ちできない力を持っており、特にアーマーナイト以上の守備力は中盤にかけての頼もしい壁として活躍してくれます。
但し、第5章で竜への変身に必要な「火竜石」を村で譲ってもらう必要があります。
初めてバヌトゥを仲間にした時は、あまりの強さに腰が抜けました。
でも、成長率はジェイガン同様、壊滅的です。
そして、かなり後になりますが、第19章でバヌトゥが話しかけることでチキが仲間になります。
神竜族だけあってその成長率はトップクラスで、かつ、マムクートに対して圧倒的な強さを誇ります。
よっぽど運が悪くない限り、あっという間に最強キャラの一人になります。
スナイパー
アーチャーの上級クラスです。
ファミコンのグラフィックということもあり、当時はスナイパーの戦闘時の姿が、相手と反対の方向を向いて待機し、攻撃する時だけ前へ振り向いているように見えて、相手が攻撃してくるというのに後ろ向きで待ってるなんて…なんてカッコいいんだ!シブすぎる!とコーフンしてましたが、よく見ると常に前を向いてますね。
このコーフンのおかげで、金髪で男前(のように見える)ジョルジュが、成長率は悪いですがお気に入りでした。
ペガサス3姉妹
飛竜と天馬の産地で知られるマケドニア王国の王女ミネルバの兄ミシェイルは国王を殺し、自ら国王となりドルーアに加担している悪の鏡のような人物です。
ミネルバの妹、つまり自分の妹でもあるマリアを人質のように扱い、ミネルバを無理矢理マケドニアに引き留めていましたが、マリアがマルス軍に救出されたのをきっかけに、ペガサス3姉妹と共にミネルバはマケドニアから離脱します。
このマケドニアのパオラ・カチュア・エストの3姉妹が「ペガサス3姉妹」と呼ばれており、ミネルバの直属の部下であり、お互いの信頼関係は厚いようです。
説明書にもゲーム内にも説明がない裏技として、3姉妹で上下左右を囲むようにしてから攻撃するとトライアングルアタックなる攻撃が可能です。
必殺の一撃が100%発生し、どんなに敵の守備力が高くても最低15ダメージを与えてくれます。
3人とも成長率が高く、何よりこんな可憐な3人が集まると周囲が一気に華やかになります。エストは少々遅れての合流となりますが。
ここにシーダも加われば、まさに楽園です。
エリス王女
マルスのお姉さんです。マルスをタリス王国に逃がして以来の再会となります。
冒頭で「死んだキャラは生き返らない!」とエラそうに書きましたが、実は最終章直前でたった一人だけ生き返らせることができるんです。
それがエリスの持っているオームの杖の効力です。
カミュで死者を2人出してしまった後にこのオームの杖の存在を知り、こんなことならなんとか死者1人に抑えておくべきだったと悔やんだ記憶があります。
エンディング
最終章はメディウスさえ倒せばクリアとなる為、マルスが強めに育っているならワープの魔法であっという間に決着をつけることも可能です。
普通に攻略する場合でも、このステージで終わりなので貴重だった武器もガンガン使えます。
レア武器温存のしがらみから解放される瞬間は快感そのものです。
最後に、このゲームはマルスが生きてさえいればクリアすることが可能となっています。つまり、シーダはヒロインなのに死んでもゲームオーバーとならずにゲームがクリアできてしまうわけです。
万が一、シーダが死んでしまった場合は必ず優先して復活させましょう!シーダが死んだままクリアしてしまうとあまりにも悲しいエンディングを見るハメになってしまいますよ。
スポンサーリンク