1985年11月 エニックス 売上本数60万本
今やテレビや小説で星の数ほど存在するサスペンスドラマですが、それをわざわざファミコンゲームにしたのがこの名作推理アドベンチャーゲームです。
ヤス
ゲームを始めるといきなり目の前に「ヤス」がいます。
唐突に「ここで事件がありました。何をしますか?」とのことですが…

事件の内容がまったくわからない!
肝心な事件の内容は、説明書で確認するしかありません。
そう!昔の説明書は今と違い、プレイ前に必読するものだったのです。
…ですが、このゲーム、いつのまにやら家にあった代物… 説明書など見当たりません。
その為、画面に表示されている七三分け男(=ヤス)が「ボス!、ボス!」と連呼してくるのをガン無視して、「自分が『ボス』」であることを理解せずにプレイするという状況に。
ゲームのプレイヤー = 画面に表示されているキャラ
という図式しかなかった幼ききゆこうは、ヤスが自分と思ってました。アホですね。
後日説明書を確認すると、その辺も丁寧に書いてくれてますね。
(でもこの感じだと、当時説明書があったとしても、幼ききゆこうには理解できなかったのは想像に難くない。)
念の為言っておくと、今更ですが以下、ネタバレ満載ですので、万が一「犯人は○○」を知らないと言う方はご注意を。
それと、基本的に子供時代の印象で感想を述べてますが、ところどころ大人になってからの推察も混ざってます。
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雰囲気が怖い!
まずこのゲーム、BGMが無く、テキストの音だけが淡々と鳴っているだけなのでそれだけで不気味です。
早速、事件の被害者であり殺された山川耕造の屋敷へ行き、殺人現場を調べます。
そう言えば事件の概要ですが、この山川耕造(貸金業会社の社長。以下「耕造」。)殺人事件を解決するのが目的です。
ちなみに密室殺人です。
さて、
死体のあった場所の線枠が生々しくて怖い。

隣の部屋でボタンを押すと、現場の部屋で地下通路への階段が開きますが、そんな怪しげな所へ入るのがまず恐い。
ボタンを押して入る場所とか…
何が仕掛けてあるかわかったもんじゃない。
しかし、事件の手掛かりになるやもしれぬ隠し階段… 調べないわけにはいきません。
階段を降りると、そこは見事なほど殺風景な迷路。迷路!?
しかも進んでいるとちょくちょく背後で壁が閉まるとか…。
途中途中に壁に書かれているラクガキが、今思えばわざとらしいとしか言いようがないですが、当時はその脅しにまんまとビビってました。
やっと辿り着いた奥には借用書が入った金庫がありました。
… 借用書って何?
お金絡みの事件だな!?なんて発想はもちろん子供にはできません。
地上に戻ってホッと一安心。
もう二度と入りたくない!って思いました。
叩いて吐かせる!
捜査本部に戻って、取調室に関係者を呼んで事情聴取します。
関係者
- 殺された山川耕造の甥で、見るからに不良の俊之。取り調べ室でタバコ吸ってる。
- 平田(耕造から金借りてる)の娘、由貴子。セーラー服少女。カチューシャがヘッドホンに見える。
- 耕造の会社の従業員(守衛)の小宮。白くて弱々しいじいさま。
- 耕造の秘書の文江。髪の毛がボリューミー。
俊之
事件当時、「家にいた」と証言する俊之。
この不良な絵面からして… 絶対ウソだな。
そして、おもむろに俊之の部屋へ移動するヤス&ボス。
捜索令状が無くてもお構いなしに、部屋に上がり込みます。
令状が無ければ、本人がいても部屋に入る事はできませんが、本人すらいない状態で部屋に入ります。
電話のところにあるメモの「こめいちご」は有名な手がかりです。
これは「※ 1 5」という電話番号の事なのです。
早速かけてみましょう。かけるんかい。
俊之の知り合いらしき男がでました。
ある物を渡すから港に来い、と指示してきます。
ヤスはとっさに、俊之は行けなくなったから自分が代理で行く、と伝えます。
大胆過ぎるよ、ヤス。
しかし男は、わかった 早く来いよ! ガチャン、と電話を切ってしまいます。
いいのかよ!
この男は実は違法薬物の売人で俊之の取引相手なのですが、電話でのやり取りから港での受け渡しまで、あまりにも警戒心が無さ過ぎなところが逆に爽快です。
もちろんこの男は違法薬物所持の現行犯でタイホです。
ついでに港周辺で聞き込みをすると、事件発生時刻にここで俊之を見たという人を発見。
それについて再度、俊之から事情聴取します。
俊之に先ほどのブツを見せてもシラを切ってきます。
違法薬物は、使用したかどうかを調べることなら任意で可能ですが、それの所持の罪は基本的に現行犯じゃないと逮捕できません。
そこでフラグを立てる手段として存在しているのが、叩いて白状させるです!

うん、昭和。
叩かれた俊之はあっさりと違法薬物取引をしていたことを白状します。
俊之は殺人事件よりも、この取引についての罪を怖れて嘘のアリバイを証言していたんですね。
ということで、俊之は、サスペンスのお約束のダミーの犯人役でした。
でも、一つの犯罪を解決したので警察的には結果オーライということで。
トラウマシーン1
次の事件が発生です。
由貴子の父、平田(耕造に多額の借金あり)が森の中で死んでいるシーン。
首吊りのシルエット。
トラウマです…。
この状況を見た途端にまだ何も調べもしていないのに、ヤスがベラベラと喋りだします。
「やっぱり、平田が犯人だったんですね。耕造を殺して自分も自殺を…。」
「かなしい結末ですが、事件は解決しました。どうか捜査をやめろと命令してください。ボス?」
この自殺は、単純に借金苦によるものと判明するのですが、まだそれを知らないとはいえ、自殺してたってだけでもちろんそんな簡単に平田を犯人と決めつけるわけにはいきません。
何言ってんだヤスは。
しかし、この忙しい時に利害関係人が自殺するなんて警察も大変です。
由貴子
最初の事情聴取で家にいたと言っていた由貴子(平田の娘)。
由貴子の父は耕造から借金をしているので、色んな想像を巡らすとこの父娘は耕造の殺人に関与している可能性がなくはないです。
というわけで、父親が亡くなった今、娘から新たな情報が聞けるかも知れません。
まずは耕造の屋敷の前で見つけた指輪についてです。
俊之曰く、由貴子にあげたものとのことですが、由貴子は「知らない」と言う。
さらに「あんな男にもらうわけないじゃん。もらったとしてもすぐに捨てる」との事。
ヒドイ言いよう。
ところが、ここである目撃情報が飛び込んできます。
「事件発生時刻に由貴子が外出するところを見た。」
しかしアレですね、俊之の目撃情報に由貴子の目撃情報…、この界隈の人は他人のことをよく観察していますね、しかも時間までキッチリと。
確かに現実でも、家の玄関から顔だけ出して外を窺ってるおばちゃんとかよく見ますけど。
この目撃情報と落ちていた指輪が意味するところは、事件発生時刻に由貴子が耕造の屋敷に行った事を表しているわけですが、確証はまだありません。
ではどうすれば由貴子を落とすフラグが立つのか?
叩いて白状する…というのはさすがに相手が女性だからなのか、ここでは使えず。
ここではもう一度問い詰めればいいだけです。
指輪が落ちていたことを再度口にすることで由貴子は落ちます。
由貴子の話によると、父の平田は別の会社からもお金を借りており、その支払いの為に耕造にさらにお金を貸してくれるように口添えに行ったそうです。
父思いの娘さんですな。
耕造は由貴子の頼みを聞き入れ、貸すと言ってくれたようです。
この真実を証言したことによって、ゲーム的に由貴子犯人フラグは消滅するようです。
だったら別にアリバイを嘘つかなくても良かった気もしますが、まぁ若いので、疑われたくないと思って、嘘ついちゃったんでしょうね。
残りの関係者
- 小宮 ➡ コイツには人は殺せない! そう直感できるキャラなので無視します。というか、コイツが犯人だったらゲームとしても、ストーリー的にも面白くないし。
- 文江 ➡ アヤシイですねー。完璧すぎるアリバイとクールな感じが。
トラウマシーン2
耕造の屋敷で見つけたマッチを手がかりに、「スナック ぱる」 に聞き込みに行きます。
ストリッパーのおこいさん(川村といい仲だった)の情報提供で、耕造と川村(バーで耕造とよく一緒にいた)が昔、詐欺仲間だったことがわかります。
おこいさんがこんな重要な情報提供をしてくれた理由は、ヤスが男前だったから。
その後も、イケメン効果で川村の居場所を教えてくれたりします。
早速、川村の居場所へ行ってみると、またしても死体発見。
これまたトラウマ…。
そこでヤスがまた、調べもせずに喋りだします。
「もう逃げられないと観念して、自殺を…」といきなり自殺に決め付け。
「あっけないラストですが、事件は解決しました。どうか捜査をやめろと命令してください。ボス?」
んなわけない。
死因を調べると、首をナイフでひと突きです。
コレ、絶対自殺じゃない。
それにしても誰か死ぬ度に、その人を犯人にしたがるよね、ヤス。
ちなみにきゆこうは「そうなの?これで解決なの?」ってなってた気がします。アホです。
キーパーソン「おこいさん」
取調室でまたおこいさんの活躍です。
おこいさんの先ほどの告発の詳細ですが、耕造と川村がやった詐欺で一番の仕事だったのが沢木産業に対する詐欺だったとのこと。
そして意味深に「沢木 文江」(耕造の秘書)の名前を出し、そそくさと帰って行きます。
そう、文江の苗字は「沢木」なんです。
説明書には書かれていますが、ゲーム内では表示は名前だけだったのですっかり忘れてました。
ここにきてほぼシロと思われていた文江が、最重要参考人として急浮上です。
沢木産業のあった淡路島の都市「洲本」へ行って、聞き込みをすると当時の事件を知る人の話から沢木一家の事情が判明します。
それによると、詐欺が原因で会社が倒産、そのせいで経営者夫婦は自殺。
沢木一家には子どもが2人、男の子と女の子がいて、女の子はあの文江であったとのこと。
そして、男の子の方には肩に蝶々のアザがあったとのこと。
子ども達は別々の親戚に引き取られ、一家離散となった。
肩にあるアザのことまで知ってる事からして、この情報提供者は沢木一家と相当親しかった人なんでしょう。
ならば聞き込みをしているヤスに面影を見出す可能性が無きにしも非ずで、面と向かっているヤスは気が気じゃなかったかも。
ここで早速「人を探せ → 文江の兄」を命令すると、ヤスが「ボス!この辺にはいませんよ。」と言いますが、実は…
目の前にいますよ!ボス!
もうとっくにわかってると思いますが、蝶々のアザを持つ男の子とはヤスの事…そう、
犯人はヤスです。
ちなみにまだゲームとしては、ボスはヤスが犯人と分かったわけでないので、もう少し続きます。
捜査は大詰めへ
捜査本部に戻ると、突然新たな進展が待っていて、耕造の屋敷の地下迷路に新たな発見があったとの事。
ええっ!また入んなきゃなんないの!?
嫌々ながらもメモ通りに進み隠し部屋へ。
小宮(耕造の会社の従業員)のジジイのヒントから、ヤスが大声をあげます。
(大声を出す事が、隠し金庫の扉を開けるカギなのです。)
ヤス「あたたたたーっ!」
発声チョイスが斜め上。
確かに、説明書にはヤスのことを「ひょうきん者」としてますが…今はひょうきんをさらけ出す時ではない。
隠し金庫に耕造の秘密の日記を発見。
内容は沢木産業に対する詐欺事件についての、後悔と懺悔を綴ったものであった。
しかも、耕造は文江が沢木の娘である事を知りながら秘書として雇い、自分の死後の事なのか、稼いだ金を文江に残したいとも…。
「も、もし、ふみえの兄が犯人だとして、この事を知ったら、きっと、後悔するでしょうね。ボス…。」
ヤスの本音、漏れてます…。
耕造にも人間的な部分があった事に、動揺を隠せないヤス。
真犯人
どうやらここまで来るとなぜかヤスの犯人フラグが立つようで、取調室にてヤスに対して「服をとる」が選択できるようになります。
ファミコンのゲームにはクセとして「同じコマンドを繰り返す」というのがありますが、ヤスに対して「服をとる」は3回実行しないとならないのです。
ヤスの肩には…
蝶々のアザが…

あとはヤスが自供してエンディングです。
ところで、ヤスは蝶々のアザがあったってだけで「ここまでか…。」ってなってますけど、まだ全然犯人となる証拠は何も無い気がするのは私だけでしょうか。
ヤスにも耕造を殺す動機はある、という事が判明しただけのような…。
ちなみに密室は文江が死体発見時に小宮の目を盗んで、内側からカギを差して、密室トリックに見せかけたと、最後に駆け込みで自供します。
いずれにしても自供だけで証拠にはなりませんし、逮捕もできません。
ヤスが罪を償う為に逆に逮捕して欲しければ、考えられるものとしては耕造を殺した時に使った刃物の在り処を警察に言うぐらいでしょうか。
それももし海に捨ててたりしたら見つけられなかったり。
それにしても、ずっと一緒に組んできた相棒の刑事が犯人だったなんて、まさに衝撃のラストですね。
最後に、夕焼けをバックにサイレンのドップラー効果で終わるところが印象的です。
衝撃の始まり
あと、カセットのイラストをよく見たらコレ、ヤスと文江じゃないですか。
ファミコンのグラフィックでは到底再現できない綺麗なイラストだからって、堂々とカセットの表面に2人の関係性をさらしていたとは…。
プレイヤーは、ゲームを購入した時点ですでに、超重要なヒントを目の当たりにしていたわけです。
ラストの衝撃に加えて、さかのぼって衝撃の始まりでもあったんですね!
このゲームでさんざん怖がった私めでありますが、いまや読む本はサスペンス、ミステリーの類ばかりなのであった。
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