1988年7月 ナムコ(ナムコット ファミリーコンピュータゲームシリーズ第42弾)
三国志との出会い
歴史シミュレーションゲームと言えば、まず思い付くのが光栄の「信長の野望」か「三國志」ですが、私の場合はナムコ版「三国志」です。
このゲームによって三国志という物語の存在を知り、そこから興味を持ち、小説やマンガなどを読むようになりました。
そうです、ゲームから興味を持つというよくあるパターンです。
三国志は途方もない数の人間が登場する長編歴史物語であり、そして舞台が中国の為、人名も場所名も漢字だらけで、興味も無くいきなり読めと言われてもとても読めたもんじゃありません。
しかし、ゲームをやっていると必然的にパラメーターの高い人物に注目することになり、高いパラメーターを持った人物というのはもちろん物語の中でも主要な役割を果たしている人物であり、知らぬ間にそれらの主要人物の名前が頭の中に刷り込まれるわけです。
主要人物の名前と能力値がイメージできるようになれば三国志の基礎はもう大丈夫です。
最初にとっつけるかが肝心なのです。
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しかし、ナムコの三国志で人物のイメージを作ってしまうと後で多少とまどいを感じると思います。
なぜなら、今となっては光栄の三國志のデータが基本イメージになっており、ナムコ三国志をやった後に光栄三國志をプレイすると、あっちでは強かったのにこっちでは弱い、とか、あっちでは賢かったのにこっちではおバカ設定だったりするわけです。
改めてナムコ三国志をやるとよくわかりますが、光栄三國志に比べて全体的にアバウトな作りで、年代の進みが大体ですし、寿命設定も無いので同年代に出会うことの無い人物が当たり前のように一緒にいたり、また単体では最強の武将の呂布や、三国志という物語の最初のボスともいうべき存在である董卓がそもそも登場しなかったり。
私の場合、ナムコ三国志最強の「張飛」を上回る強さの「呂布」って誰?となったわけです。
後で実際どうなの?ということで、吉川英治の小説「三国志」を読むに至りました。
「三國無双」シリーズでの彼の存在感は凄まじいものがありますよね。
関羽と張飛2人を相手に互角に渡り合ったそのケタ違いの強さ。
ちなみに呂布が本当に得意なのは弓だそうです。
董卓の悪政悪行はそれはヒドイものでした。
王允(後漢の司徒)の養女・貂蝉による自らの美貌を用いた董卓・呂布への離間の計によってついに董卓は呂布に殺されますが、その後作戦を成功させた貂蝉は自ら命を絶ちます。
貂蝉を失った呂布はその喪失感に打ちのめされます。自分への愛が演技であったことも知らずに。
いつの世も、絶世の美女というのは時代の流れすらも変えてしまうすごい存在です。
ちなみに史実では貂蝉という人物は存在せず、本宮ひろし先生の「天地を喰らう」に至ってはなぜか呂布の妹という設定です。
ただどちらにしても貂蝉にそそのかされて董卓を殺すという流れは同じになってます。
それとコレじゃない!と感じたもう一つが顔グラフィックです。
絵的なものは第一印象によって最初に見たものがソレであると強く認識される為か、ナムコ顔が頭に定着した後で光栄のゴリゴリの男顔を見た場合、なかなかにイメージの修正にてこずりました。
ナムコの張飛はこんな感じ。
関羽は美髯公(びぜんこう)と呼ばれるだけあり、その立派なあごひげが特徴的に描かれるので作品によってもこれが関羽だな、とわかりやすいですが、張飛は作品によって色んな風貌してます。
ナムコ三国志の特徴
シンプル
シミュレーションなのにシンプルで手軽な感じが一番のウリだと思います。
細かすぎない武将ステータスに内政ステータス、シンプルな戦術選択と、選択肢が程よく少なめです。兵糧の概念すら無いです。
兵糧が関係ないので、内政ステータスはどれを上げても軍資金の収入量への影響に留まり、戦闘時に兵糧の残量を気にすることもないのです。
内政値を上げれば軍資金の収入が増える、それだけです、シンプルです。
兵糧が無い代わりに戦闘は1ターンで1日が経過し、10日経過しても決着がつかない時は強制終了となります。兵糧がないので、兵糧攻めも無いわけです。
強制終了すると次のターンに持ち越さず、強制的に退却させられます。次のターンで「戦況はどんなんだっけ?」ということもないです。
実際の戦闘は数か月に及ぶことも稀ではなかったみたいです。
ちなみに「決着」とは、攻めた側は「敵の全滅」、守る側は「敵の全滅、もしくは10日間生き延びること」となっております。
守る側は本拠地として、地形効果としても一級の城マスがあり、大体のシミュレーションゲームはこの本拠地を占拠される敗北となりますが、このゲームにはその敗北条件は存在せず、いざとなれば画面内を逃げ回り10日間生き残れば防衛成功で勝利となります。
攻める側が圧倒的に不利な設定になっています。
武将ステータス
体力・知力・武力・人徳・忠誠度の5つです。
武将のステータスで特に問題となるのが、武将の「武力」がそのまま兵士の攻撃力に繋がっているところです。
「三国無双」よろしく、部隊の大将一人で一騎当千の戦闘力を持っていたりするのは三国志の特徴の一つではありますが、従えている兵士はノーマルな人間なわけで、武将の武力がそのまま兵士の攻撃力となるのはかなり違和感を感じます。
多人数を動かして戦いに勝つには、武力よりも「知力」と「統率力」です。
本来ならば軍勢同士の戦闘で強くあるべきは諸葛亮や司馬懿などの天才軍師のはずですが、ナムコ三国志では「武力」が最高の張飛の軍勢が最強となってしまっているのです。
また戦場の城マスにユニットを配置すると直接計略によるダメージを受けることがない為、「知力」が最低クラスの張飛でも計略を食らうことなく悠々と知力の高い武将を撃退できてしまいます。
頭は悪いけど腕っぷしが凄い張飛とか典韋に諸葛亮が撃退されるのはなんか悔しいです。
「知力」は、本来ならば「軍事的な知力」と「政治的な知力」の2つの知力があるはずが、ナムコ三国志は一緒くたになっています。
政治家が戦場に出向いたって敵は倒せませんし、戦術家が政治をやっても逆に混乱を招くだけです。
まぁしかし、実際は賢い人はある程度なら何とかやってのけそうな気がしないでもないですが。
諸葛亮はどちらかと言うと政治家、司馬懿は軍人。
でも孔明は戦略ももちろん得意です。
劉備が三顧の礼をもって迎えた孔明ですが、それ以降司馬懿登場までの孔明無双は神がかり的です。
馬謖がヘマをやらなかったら歴史は変わっていたかも知れませんね。
「人徳」は人を惹きつける力のことで、これが高いと在野武将を発見する確率や敵武将を籠絡して寝返らせる確率が高くなります。
三国志で最も重要視されるのは、いかに優秀な人材を配下に加えるかです。一般的に主人公に位置づけられることの多い劉備玄徳の人徳の高さはいわずもがなです。
地盤も無く(実際は漢王室の末裔)、特に武芸や学問に秀でているわけでもなかった劉備が三国の内の一つ「蜀」の皇帝となれたのはその人徳によるものです。
いついかなる時でも、民の事を想い、平和な国を目指す劉備の姿は魅かれずにはいられません。
「忠誠度」は君主への忠誠心を数値化したもので、高いと寝返らなくなります。
金を与えると上げることができますが、ゲームの中盤ぐらいになると、味方につけた敵武将で優秀な人材以外はほとんどが30(最高99)ぐらいで放置されるという事態によく陥ります。謀反を起こす可能性も無いので。
また、敵は相当頭が悪い為、忠誠度の低い武将に躊躇なく兵士を持たせて出陣してくるので、籠絡の計でいとも簡単に兵士もろとも味方にすることができてしまいます。
忠誠心の高さで有名な人物は数あれど、その筆頭はやっぱり関羽ですよね。
劉備へのその絶対的な忠誠心。
ただ義理にも厚く、一時的に曹操の元にとどまることになった関羽はその時の手厚い待遇に恩を感じ、後に劉備の元に戻った時の曹操追撃戦にて敗走する曹操を見逃してしまいます。
武将ステータスの内「武力」と「知力」には育成要素があり、数値を上昇させることができますが、あまりこれを多用すると武将の個性が崩壊します。
例えば、「武力」が最高の張飛は初期「知力」がたったの20(諸葛亮で最高の99)ですが、運良く最高まで上げると88まで上げることができます。
武力知力共に80になった時点でそれ以上上げることができなくなるので、例えば文武両道の関羽の知力82や、趙雲の知力85を超えてしまっているわけです。
賢い張飛はもはや張飛ではない!
…と言いたいところですが、張飛のエピソードの一つ、橋の狭さを利用して一騎で数万の曹操軍を追い払った「長坂坡の戦い」では、背後で多数の旗を振らせて味方が背後に多数控えているように見せかけるように指示したのは誰あろう張飛です。
他にもちょくちょく頭使ってますよ。
ところで「体力」についてはなぜか上げることができない仕様なので、どうせ育てるなら体力だけは無駄に高い武将を育てた方が最終的には優秀な武将となります。
三国志漫画の傑作
戦闘
シミュレーションゲームの戦闘時に最も大事なのは地形効果です。
地形効果を甘く見ていると、予想以上の損害を被りますが、そのへんはこのゲームでも感じることがあります。
ナムコ三国志では武将一人につき1000人の兵士を持つことができ、部隊同士が接触して直接戦闘モードになると兵士100につき1人表示の、大将含めて11人対11人がチョコチョコと動く戦闘画面になり、得意地形だと行動力が2倍になり、攻撃回数も2回になるので、圧倒的に有利に戦えます。
但し防御効果は無いです。
仲間にしたい敵武将が相手の時は、攻撃しすぎて倒してしまわないように得意地形を避けた方がいいかと。
地形効果で特に顕著なのが、城マスです。
前述したように、このマスにいると計略が直接効きませんし、直接戦闘モードにおいてはどの部隊であっても必ず行動力が2倍になります。
侵入経路も少し狭くなっているので簡単に大将まで辿り着くこともできませんし、前線部隊と戦わせている間に後方の弓兵がチクチクと弓を射ることができます。
ここに兵士を1000人持った張飛が立て籠もっている場合、果たして城を落とすことはできるのでしょうか?
反対に、城のお得要素のおかげで体力と武力さえ高ければ一部隊だけで防衛することが可能なので、こちらが出陣して武将達が出払った後の城が手薄になる際も、体力と武力が少々高め(85ぐらい)の者を1人置いておけば城が落ちる心配はほとんど無いです。
もし押され気味になった場合は逃げ回りましょう。
ちなみに孔明ですら、動きのある敵は倒しようもあるが、堅固な要塞に完全に守りに徹されるといかに自分でも落とすのは容易ではないと言ってます。
機動力
戦闘時の機動力は部隊数が多いほど高くなり、そして全部隊で共有することになっています。
つまり、全部隊を均等に動かしてジワジワと近づく、もしくは精鋭のみで一気に近づくなど戦略を変えることができます。
特に防衛戦では敵が近づくまでにいかに計略で兵士数を減らせておくかで、自国の損害を抑えられるかに繋がるので、城内にいるのがあまり使えない武将ばかりだったとしても「機動力を増やす」という恩恵は受けることができます。
計略
使える範囲は無制限ですが、敵との距離が近いほど成功率は高くなります。ありがたいことに、敵はある程度近づかないと使用してこないです。
敵のいるマスの地形によって使える計略が違い、それに伴って消費機動力も差がありますが、効果のほどは似たり寄ったりです。「火計」が一番燃費がよく消費機動力は4です。
ちなみに孔明は火攻めが得意で、どうしても降伏しない敵に対しやむを得ず、火薬を仕込んだ場所におびき寄せ、閉じ込め、数万の敵兵をほぼ全員焼き殺したこともあります。
城マスに直接計略は仕掛けられませんが、隣接した部隊がいればそちらに「共殺(同士討ち)」を仕掛ければ、城マス部隊にもダメージを与えることが可能です。但し消費機動力が9と火計の2倍以上となっています。
「忠誠度」のところで触れましたが、成功するとかなり嬉しいのが「籠絡の計」です。成功すると、敵を倒すどころか兵士もろとも味方にしてしまうわけですから最強の計略です。そして消費機動力も最高の10です。
一騎打ち
三国志のカッコイイ演出の一つが大将同士のタイマンバトルです。
直接戦闘モード時に大将同士が接触すると「一騎打ち」画面に切り替わります。ファミコンなのになかなか迫力ある画面。
戦闘コマンドには、ダメージは少ないが確実に当たる「牽制」、普通の「攻撃」、当たる確率が低く、しかも外すと自分がダメージを受けるが、当たれば特大ダメージを与える「捨て身の攻撃」の3種類があり、このままでは負けるって時に捨て身の攻撃が当たった時の快感はなかなかのものです。
まぁほんとに死んでほしくない武将の場合は、捨て身の攻撃なんて危ういことはやりませんけど…。
三十六計逃げるに如かず
「逃げちゃダメだ!逃げちゃダメだ!」で有名なアニメもありますが、現実では逃げることは悪い事ではないんです。
このゲームもカンタンカンタンと油断していたところ、思ったよりも敵が強かったということもあるので退却して体勢を立て直すことも必要です。
戦場からの退却によるデメリットは特にない(出陣時の費用ぐらい)ので、無理と思ったら逃げ放題ですが、直接戦闘モードからの退却(後退)は武将の体力が減ります。
後者は、続けていると最終的には退却時に力尽きることもあるので、大事な武将はそうなる前に戦場自体から退却させましょう。
命令書
このゲームでは「行動」を起こすには「命令書」なるものが必要で、これは自国領の城の数に比例して増えていきます。
城を奪うと行動できる回数が増え、多く行動できると国力や軍備の増強ができ、それによりまた敵の城が奪取しやすくなる、というように城の数が多い程有利になっていくわけです。
光栄三國志のように「武将一人が一つの行動まで」とは違い、同じターン内で最初の出陣で敵の戦力を削り、退却後すぐに兵士を補充して、再度同じメンバーで出陣するといったことも可能です。
重要拠点の内政値をひたすら上げまくるのもありです。
城同士の道
これはナムコ三国志に限ったことではないですが、敵に隣接していない城に優秀な武将を置いておくのは全くの無駄で、前線以外の城には武将一人置いておけばいいのです。
これについては、序盤、大陸の中央部に位置する劉備と曹操は、回りを敵に囲まれておりすべての城が前線です。両者とも優秀な武将が豊富ですが、城を守るために武将を分散させて戦力のバランスを常に調整する必要があります。
敵と隣接していないのに、前線の城と勘違いしている城もあったりするので、城同士の道はたまに確認しておきましょう。それによって新たな進軍ルートが見つかったりします。
その他
情報集め
内政コマンドの「情報集め」を実行した武将はそのターンは不在となり、次のターンで実行した結果を持ち帰ってきます。
その結果は、金が増えたり、質屋に売ることができる宝石などを持ち帰ったりしますが、一番嬉しいのがまだ世に出ていない在野武将を発見した時です。
まだあまり武将を把握していなかった当時は新しい人材がどれほどの能力を持っているのか確認するのがめちゃくちゃ楽しかったです。
典韋とか許褚を連れ帰って来た時はとんでもない逸材がキターッ!となったもんです。
その喜びは諸葛亮を連れ帰った時を上回ります。
なぜなら子どもは、天才戦略家よりも最強戦士の方に憧れるからであります。
民衆の反乱
自然災害は発生しないので安心ですが、その分強敵がダメージを受けることもないということです。
それと、自然災害ではないですが、城の統治度が低すぎると民衆が反乱を起こし、内政値全てが下がります。放っておくとさらに反乱が連発し、廃墟のような城になってしまいます。
ゲーム後半になると軍資金に困るということはほとんどなくなく、謀反を起こして独立される可能性もないので、後方の城はほったらかしで荒れ放題になりがちです。
民のみなさん、すいません。
後継者
後継者制度が無いので、君主がやられるとその時点でゲームオーバーとなり、敵君主を倒した場合は、その支配下にあった城と武将全てが自分の配下に加わることになります。
ダイレクトに君主を狙って倒せた場合はかなり気持ちいいです。但し、急に多人数が配下になる為、どこにどんな武将がいて、どんな状態かを把握するのが大変だったりします。
次ターンに攻め込まれて、馴染みのない武将を使って戦うことになるので、どうにも操作がぎこちなくなります。
私照れ屋さんなので。
まとめ
システムがシンプルすぎるのも確かですが、わかりやすく楽しくプレイできるのは事実なので、これはこれでいいんじゃないでしょうか?おかげで三国志と歴史シミュレーションの面白さが分かったわけで。
少々小難しい光栄三國志から入っていたらどうなっていたかはわかりません。なぜならその後「信長の野望」をプレイして日本の歴史小説を読み漁るようになったということはなかったので…。
まぁ舞台となる国も違えば、時代も文化も全く異なるものなので同じように考えるのは無理があるかも知れませんが。
頭の出来が良くない私としてはやっぱりナムコ三国志ぐらいの(コマンド)選択肢の量でないと、脳がパンクするのであります。
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